米国経済: 関税政策の影響と消費者信頼感の急落
米国経済は2025年4月、関税政策の不確実性と消費者信頼感の急落によって先行き不透明感が増す中、製造業の部分的な活況と労働市場の底堅さという相反する指標が見られています。貿易摩擦の激化により、企業や消費者のセンチメントが悪化し、インフレ懸念も高まっています。
耐久財受注の急増と製造業の不均衡な回復
米国商務省の最新データによると、2025年3月の耐久財受注は前月比9.2%と大幅に増加しました。この増加は主に商業航空機の強い需要によるもので、2月の0.9%増加から大きく伸びました。しかし、この数字は表面的な強さを示す一方で、製造業全体の状況はより複雑です。
シカゴ購買部協会指数(PMI)は3月に45.5から47.6へと若干改善したものの、依然として50を下回り、活動の収縮が続いていることを示しています。この指数は製造業とサービス業の両方を含んでおり、数ヶ月連続で低下した後、活動は低水準に落ち込み、縮小し続けています。
引用先:https://www.reuters.com/business/aerospace-defense/us-durable-goods-orders-soar-aircraft-bookings-march-2025-04-24/
労働市場の堅調さと潜在的リスク
労働市場は現時点では比較的堅調を維持しています。4月19日までの週の初回失業保険申請件数は6,000件増加して222,000件となりましたが、これは経済予測と一致しており、大幅な悪化は見られません。しかし、企業調査や財務予測の調整からは、企業の慎重姿勢が窺えます。
また、FOMCの3月の議事録では、最近の企業の解雇発表や経済的理由によるパートタイム労働者の増加が指摘されています。さらに連邦政府の雇用削減や資金カットが、連邦請負業者、大学、病院、自治体、非営利組織の雇用に影響し始めていることも指摘されています。
インフレ圧力の高まりと金融政策
インフレは依然として懸念材料となっています。米国のコアPCE物価指数(連邦準備制度理事会が重視するインフレ指標)は2月に年率2.8%に上昇し、1月の2.7%から加速しました。これは予想の2.7%を上回る数値です。
2月の消費者支出は0.4%増加しましたが、エコノミストの予想0.5%を下回りました。特に注目すべきは、サービス支出が0.2%の穏やかな増加にとどまり、レストランやホテルからの収入が15.0%急落したことです。これは消費者が裁量支出をより慎重に行うようになっていることを示しています。
FOMCの議事録によれば、委員会のメンバーはインフレがある程度進展していると判断していますが、一部の参加者は1月と2月のインフレデータが予想より高かったことを指摘しました。また、ほぼすべての参加者が調査や金融市場におけるインフレ期待の上昇に言及しています。
関税の影響に関して、JPモルガンは自動車関税への対応として、今年のコアPCEインフレ予測を2.8%から3.0%に修正しました。
引用先:https://economics.td.com/us-fomc-minutes
消費者信頼感の急落と支出の減速
*ミシガン大学 熱気球
ミシガン大学の消費者信頼感指数は4月に52.2と、3月から8.4%急落しました。特に消費者期待指数は10.1%も下落し、1月からの3ヶ月間で32%という1990年の景気後退以来最も急激な下落を記録しました。この悪化は中所得層家族で特に顕著でしたが、年齢、教育、所得、政治的立場を問わず広範な人口層で期待が悪化しました。
消費者は貿易政策の不確実性やインフレ再燃の可能性など、経済の複数の側面にリスクを認識しています。労働市場に対する期待も悲観的なままです。さらに懸念されるのは、消費者が今後1年間の自身の収入成長が弱まると予想していることです。「信頼できる強い収入がなければ、消費者が認識している多くの警告サインの中で支出が強く維持される可能性は低い」とミシガン大学の調査は指摘しています。
関税政策の経済的影響
トランプ大統領の頻繁に変化する関税に対する姿勢は、経済の不確実性を増大させ、企業と消費者の信頼を著しく損ない、支出を抑制し、最終的に雇用削減につながる可能性があります。
トランプ大統領は関税を彼の提案する減税を相殺する収入源として、また長期にわたって衰退してきた米国の産業部門を活性化する手段と捉えています。しかし、国内製造業は輸入原材料に大きく依存しており、経済学者はこれらの関税がサプライチェーンを混乱させる可能性があると警告しています。
ベッセント米財務長官と加藤財務大臣の会談
日米財務大臣会談の概要
ワシントンD.C.で加藤勝信財務大臣とスコット・ベッセント米財務長官による初の対面会談が行われました。会談は約50分間にわたり、両国の経済・金融政策や貿易、為替問題など幅広いテーマで意見交換が行われました。
主な議題とやり取り
- 為替問題については、両大臣が「為替レートは市場で決定されるものであり、過度な変動や無秩序な動きは経済・金融の安定に悪影響を及ぼす」との国際的な合意を再確認しました。今後も為替に関して緊密かつ建設的に協議を続けることで一致しました。
- 会談後、加藤大臣は「為替水準の目標や管理枠組みについての議論は一切なかった」と明言。米側から為替水準に関する具体的な要求や目標設定の話は出なかったことを強調しました。
背景と市場の反応
-
トランプ大統領が円安ドル高の是正を繰り返し求めている中、金融市場では米国が日本に円高是正を求めるのではないかという観測が高まり、為替市場は不安定な動きを見せています。
-
会談に先立ちG20財務相・中央銀行総裁会議でも、米国の関税強化による経済の不確実性への懸念が各国から表明されました。日銀の植田総裁も「データを丁寧に見極め、適切に政策判断を行う」とコメントしています。

為替の議論を期待していた人は多かったんじゃないかな。
トランプ大統領のトゥルースソーシャル
暗号資産(仮想通貨)分野への支持表明
4月25日、トランプ氏は「米国は暗号資産分野でリーダーにならなければならない。二位では意味がない」と投稿し、暗号資産産業への積極的な支持姿勢を強調しました。また、「暗号資産企業や新しい急成長する業界に対して非常に前向きで柔軟な考え方を持っている」と述べています。
バイデン大統領への批判
同じく25日、トランプ氏は「我が国史上最悪の大統領であるいかさまジョー・バイデンは、我が国がゆっくりと苦しみながら死ぬことを望んでいる」とバイデン大統領を強く批判しました。

こ、こわい・・・
会見での発言
4月22日の会見で、パウエル議長を「解任するつもりはない」と明言しましたが、一方で「負け犬」呼ばわりするなど強い批判も続け、FRBの独立性に懸念を示しました。また、FRB議長への圧力が市場の混乱を招いているとの指摘も報じられています。
これ以外には、米中貿易交渉の進展や中国との会談についても言及し、「今朝会談した」と述べる一方、中国側は「いかなる協議もしていない」と交渉否定で両者の見解が対立していることを強調しました。トランプ氏はまた、関税の引き下げについて「中国の対応次第」としており、公平な取引が実現すれば関税を大幅に下げる用意があるものの、合意がなければ高関税を維持する姿勢を示しています。さらに、海産物の競争力強化に向けた規制緩和や調査指示にも触れています。
今後の見通しとリスク要因
米国経済は現在、相反する指標が混在する状況にあります。一方では耐久財受注の急増や労働市場の相対的な安定性があり、他方では消費者信頼感の急落、インフレ圧力の高まり、貿易政策の不確実性があります。
特に懸念されるのは、消費者センチメントの急速な悪化と、今後の個人所得に対する悲観的な見通しです。消費者支出は米国経済活動の3分の2以上を占めるため、これらの指標の弱化は経済の重要な部分に対する重大なリスクとなります。
また、FOMCの議事録では、経済は依然として堅調なペースで成長しているものの、「消費者支出の成長が緩和する兆候がいくつかある」と指摘されています。小売企業や航空会社からの収益予測の下方修正は、消費者需要の弱化を示唆している可能性があります。
関税政策の継続と拡大は、インフレ圧力を高め、企業活動を抑制し、最終的には雇用に影響を与える可能性があります。今後数ヶ月間、これらの経済指標の動向を注視する必要があります。
コメント