米経済時事ニュースをまとめ(5月5日から5月10日まで)

金融

米国経済週報:トランプ政権の関税政策と米中貿易協議

2025年5月5日から10日までの一週間、米国経済は関税政策をめぐる動きと米英貿易合意や米中貿易協議が大きな焦点となりました。

トランプ政権の積極的な通商政策が世界経済に影響を与える一方、中国との貿易摩擦緩和に向けた初めての閣僚級協議も開始されました。以下に、この期間の主要な経済動向をお伝えします。

トランプ政権の関税政策と経済戦略

ベッセント米財務長官は5日、ロサンゼルスで開催されたミケ・グローバルコングレスの講演において、トランプ大統領が掲げる関税や減税、規制緩和を巡る措置が相互に連携し、米経済への長期投資を促進するという認識を示しました。

財務長官はトランプ氏の経済政策について「関税、減税、規制緩和は、それぞれ独立したものではなく、米国経済への長期的な投資を促進するために相互に連携したエンジンの一部である」と述べ、これらの政策が雇用創出や住宅市場の活性化、経済成長などに寄与すると強調しました。

同日、トランプ大統領は自身のSNSを通じて、外国で製作されたすべての映画に100%の関税を課す方針を発表しました。

トランプ氏は「他国はアメリカで映画を作る気がなく、我々の映画を盗んだのであって、関税をかけるべきだ」と主張し、アメリカの映画産業が「急速に死を迎えつつある」と懸念を表明しました。また、外国の映画製作を巡る取り組みについて「国家安全保障上の脅威だ」との見解を示しましたが、具体的な実施方法については明らかにしていません。

米英貿易合意の発表とトランプ大統領の声明

5月8日、トランプ米大統領とスターマー英首相は、米英間の「画期的な貿易合意」に達したと発表しました。これはトランプ政権が4月に発表した「10%のベースライン関税」政策のもとで、主要な貿易相手国との初の包括的合意となります。

合意内容:米国側

  • 英国製自動車に対する関税を現行の27.5%から10%に引き下げ、年間10万台までの英国車に適用。
  • 鉄鋼・アルミ関税0%に
  • 相互関税・医薬品関税は継続協議

合意内容:英国側

  • 米航空機100億ドル購入
  • 牛肉など農畜産品に市場開放促進
  • エタノール輸入関税を0%に
  • デジタルサービス税は継続協議

英国側はだいぶ譲歩していることがわかります。

トランプ大統領はホワイトハウスでの発表で「この合意は米英関係を今後も強化する全面的で包括的な合意だ」と強調し、「米国の製造業者に新たな機会をもたらし、年間50億ドルの輸出増加が期待できる」と述べました。また、映画の輸入関税については英国と個別に協議を続けるとし、「ジェームズ・ボンドは何も心配することはない」とユーモアを交えて語りました。

米中貿易関係と初の閣僚級協議

5月10日、米国と中国は2日間の予定でスイス・ジュネーブにおいて貿易問題の協議を開始しました。この協議はトランプ米政権で関税交渉を担うベセント財務長官と中国の何立峰副首相による閣僚級会談で、米中が互いに高い追加関税を発動してから初めての閣僚級協議となりました。

永世中立国のスイスで話し合いが行われるんだ。

スイス政府が米中に働きかけたみたいだね。

この協議に先立ち、トランプ大統領は9日、計145%に達していた対中関税を80%に引き下げる考えを示唆していました。しかし、ホワイトハウスのレビット報道官は同日の記者会見で「一方的に関税を引き下げるつもりはない」と述べ、中国側の譲歩も不可欠との姿勢を示しました。

一方、中国共産党機関紙の人民日報は10日、「理不尽な要求に迎合して国益を犠牲にすることはない」と安易に妥協しない姿勢を改めて強調。また「1、2回の交渉で問題が解決できると願うのは非現実的だ」とし、今回は協議の始まりに過ぎないとの見方も示しました。

米中貿易の話し合いで中国側が途中退席したみたいだけど、お腹が空いたから昼食に行っただけだったワン。

 

 

米経済の現状と国内反応

BBCニュースの報道によると、米国経済は3年ぶりにマイナス成長を記録し、トランプ大統領は「時間が欲しい」と述べています。また、IMFは米国の経済見通しを下方修正し、先進国の中で最大の下げ幅となったことが報じられました。この下方修正の原因は関税政策による不確実性にあるとされています。

トランプ政権の関税政策に対しては、国内でも反発の動きが見られます。カリフォルニア州は「トランプ関税」の停止を求めて提訴し、州としては初めての法的措置を講じました。同時に、カリフォルニア州の経済規模は日本を抜いて世界4位になったことも報じられています。

 

 

日本は大丈夫なのかしら・・・心配。

米国債利回りの急騰が市場に波紋

米国債利回り上昇の背景と市場反応

ISM非製造業価格指数の急騰

5月5日に発表されたISM非製造業価格指数が約2年ぶりの高水準(58.3ポイント)に達したことが、米国債利回り上昇の直接的な要因となりました。この指標はサービス業の投入コスト上昇を反映しており、市場参加者のインフレ懸念を再燃させました。10年債利回りは同日中に4.339%まで上昇し、前週末比で1.9ベーシスポイントの増加を記録しています。

金融政策との相互作用

FRBのパウエル議長は5月8日のFOMC会合後、インフレ抑制に向けた「higher for longer」政策を維持する方針を明言しました。これを受けて2年債利回りが3.843%まで上昇するなど、短期金利の上昇圧力が利回りカーブのスティープ化(2年-10年債利回り格差49.9bp)を加速させています。市場関係者の間では、FRBが2025年内の利下げ回数を2回に下方修正したことが、長期金利の安定化を阻害しているとの見方が強まっています。

「利下げしろ!」Mr.Too Late

今後の展望

トランプ政権の関税政策と米中貿易摩擦は、世界経済に大きな影響を与え続けています。今回の米中閣僚級協議が緊張緩和の道筋をつけられるかどうかが今後の焦点となりますが、中国側の強硬姿勢もあり、短期間での問題解決は難しいとの見方が強まっています。

国内経済に関しては、トランプ大統領が掲げる関税、減税、規制緩和の政策パッケージが雇用創出や経済成長にどのような影響を与えるかが注目されています。財務長官はこれらの政策が米経済への長期投資を促すと主張していますが、IMFの下方修正に見られるように、国際的な見方はより慎重なものとなっています。

今後の焦点は、FRBが6月のFOMCで示す新たな経済見通しに集まりつつあります。パウエル議長が「インフレ期待のアンカー維持に全力を注ぐ」と述べたように、政策当局者のコミュニケーション戦略が市場の金利予想を左右する構図が鮮明となっています。

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