- 今週のアメリカ経済ニュース総括
FOMCと関税政策に注目
今週のアメリカ経済は、トランプ政権の積極的な関税政策の影響と米連邦公開市場委員会(FOMC)の動向が焦点となりました。トランプ大統領による各国への追加関税発表が市場に動揺をもたらす一方、FOMCの政策決定と経済見通しに注目が集まりました。特に米中貿易摩擦の再燃と世界的な貿易戦争への懸念が高まる中、スタグフレーションリスクに対する警戒感も広がっています。
FRBの金融政策決定
FRBは3月19日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を据え置くことを決定しました。この決定は市場の予想通りでしたが、FRBは経済見通しを下方修正し、不確実性の高まりを指摘しました。
主な点は以下の通りです:
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2025年の経済成長率予測を2.1%から1.7%に引き下げ。
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インフレ率予測を2.5%から2.7%に引き上げ。
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失業率予測を4.3%から4.4%に引き上げ。
引用先:https://www.usnews.com/news/economy/articles/2025-03-19/fed-stays-pat-on-interest-rates-sees-slower-growth-and-higher-inflation-in-2025#google_vignette
FRBのパウエル議長は、「米国経済は依然として強い状態にあるが、不確実性は高い水準にある」と述べています。
市場の反応
FOMCの決定を受けて、株式市場は上昇しました。ダウ平均、S&P500、ナスダック総合指数はいずれも小幅に上昇しています。
一方で、金価格は過去最高値を更新し、1オンス当たり3,045ドルまで上昇しました。これは投資家のリスク回避姿勢の高まりを示しています。
トランプ氏の関税に関する発言
2025年3月、トランプ氏の発言は暗号資産政策や、対中貿易対策など多岐にわたり、国内外で物議を醸しています。これらの発言についてまとめました。
暗号資産政策
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3月20日、デジタル資産サミットでのビデオメッセージで、暗号資産業界を支持する姿勢を示しました。
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暗号資産が経済成長を促進すると主張し、「あなた方は経済成長の爆発を引き起こすだろう」と述べました。
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押収されたビットコインの売却停止や、業界リーダーと政府当局者の連携を進めていることに言及しました。
対中政策について
- 関税には柔軟性がある。
- 相互だから柔軟性がある。
- 関税免除を求める人はたくさんいる。
- 一つの国に関税免除をしたら、全てに免除しないといけない。
- 4月2日は解放記念日だ。
金融政策
- FRBが金利を引き下げればすばらしいことだ。金利引き下げを要求。
- ウクライナとのレアアース協定に間もなく署名
これらの発言から、トランプ大統領は暗号資産支持、積極的な関税政策、金融緩和要求、低コストの平和外交、対中強硬姿勢などの政策方針を示していることがわかります。
トランプ政権の関税政策と市場への影響
トランプ大統領による関税政策の発表が市場に大きな影響を与えています。先週3月10日〜13日の米国株式市場では、NYダウが大幅下落を記録しました。特に10日には今年最大の下げ幅を記録し、4日連続の下落となりました。21日まではダウの調整の戻しが見られます。
トランプ大統領はカナダから輸入する鉄鋼とアルミニウムに対し追加関税を課すと表明し、前回の引き上げ分と合わせて関税率が50%に達することになりました。さらに3月13日には、欧州連合(EU)に対してワインやシャンパンに200%の関税を課す可能性も明らかにしました。
これらの発表を受け、カナダやEUは報復関税を課すことを表明し、貿易戦争の激化による世界経済への悪影響が懸念されています。市場では関税の応酬による経済の先行き不透明感から、リスク回避姿勢が強まり株価下落につながりました。
関税政策の長期的影響
専門家の間では、次期トランプ政権による行き過ぎた関税政策がインフレ圧力を高めるリスクについて警戒感が広がっています。仮に関税の引き上げが積極的に実施されれば、米国内のインフレが加速し、FRBの金融政策判断にも影響を及ぼす可能性があります。
三井住友DSアセットマネジメントの分析によれば、中国に対する関税は現在の平均20%から40%へ引き上げられる可能性があるものの、全輸入品への関税引き上げについては各国との個別交渉になると想定されています。
引用先:https://www.smd-am.co.jp/market/ichikawa/2024/12/irepo241224/
FOMC会合と金融政策の行方
今週の最大の注目点は、18〜19日に開催されたFOMC会合でした。市場では政策金利の据え置きが予想される中、経済見通しの修正とパウエルFRB議長の会見内容に注目が集まりました。
特に関心を集めたのは、FRBが利下げを急がないとするスタンスに変化があるかという点です。米国では景気後退の中でインフレが進行する「スタグフレーション」への懸念が高まりつつあり、FRBの金融政策判断が一層難しくなっています。
今後の金融政策見通し
当初は2025年に四半期ごとの利下げが予想されていましたが、トランプ政権による政策の不確実性に備え、利下げペースが半年ごとに修正される見方も出ています。
パウエル議長は「金利引き下げを急いでいない」とし、トランプ政権が打ち出す一連の政策が明確となるまで待つ姿勢を鮮明にしました。
それに対して、トランプ氏は、アメリカの関税が経済に影響し始めるなか、「FRBは金利を引き下げた方がはるかに良い」と述べました。
トリプルウィッチング(Triple Witching)とは?

「トリプルウィッチング」という名前には、「3人の魔女が市場をかき乱す」という意味が込められています。「ウィッチ(魔女)」という表現は、市場の混乱や不安定さを象徴しています。
以下の3つのデリバティブ取引が同時に満期を迎える日のことを指します。
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株価指数先物取引
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株価指数オプション取引
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個別株オプション取引
この日は毎年、3月、6月、9月、12月の第3金曜日に訪れます。
トリプルウィッチングの特徴と影響
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取引量の急増: 満期を迎えるデリバティブ取引が多いため、投資家やファンドマネージャーがポジションを決済またはロールオーバー(延長)することで、市場の取引量が大幅に増加します。
- ボラティリティ(価格変動性)の上昇: 取引量の増加に伴い、株価や指数が大きく変動することがあります。特に満期日が近づくにつれて、この傾向が顕著になります。
- 市場への影響: 投資家のポジション調整やマーケットメーカーの対応によって、株価指数や個別株の価格が一時的に乱高下する可能性があります。
注意点
トリプルウィッチングの日は、市場参加者が事前にポジション調整を行うため、株価が予想外の動きを見せる場合があります。このため、投資家は市場のボラティリティに注意しながら取引を行う必要があります。
結論
今週の米国経済は、トランプ政権の積極的な関税政策と、それに対する各国の反応に大きく左右されました。関税の引き上げは短期的に株式市場に動揺をもたらしていますが、長期的にはインフレ圧力を高め、FRBの金融政策にも影響を与える可能性があります。
FOMCの政策判断と経済見通しも今後の市場動向を左右する重要な要素となっており、スタグフレーションへの懸念が高まる中、慎重な政策運営が求められています。今後も米国経済の動向、特にトランプ政権の通商政策とFRBの金融政策の相互作用に注目が集まるでしょう。
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