米国経済週間レビュー(2025年5月19~24日)

経済指標分析

2025年5月19日から24日における米経済動向とトランプ関税政策の市場への影響

5月19日から24日にかけての一週間は、トランプ大統領の関税政策発言が金融市場に大きな波紋を投げかけた期間として特筆します。この期間中、米国の財政政策から貿易政策まで幅広い経済分野でトランプ政権の政策方針が具体化し、国内外の市場が敏感に反応しました。

特に、EU向け関税の大幅引き上げ発言は、グローバル貿易体制への懸念を一層深刻化させ、各国経済の先行き不透明感を増大させる結果となりました。

財政政策と金融市場の初期反応

減税法案可決と市場の反応

5月19日、米下院予算委員会はトランプ大統領が掲げる減税策を盛り込んだ法案を可決し、本会議での採決に向けて前進しました。この動きは財政赤字拡大への懸念を市場に呼び起こし、投資家の間では米国債の格下げリスクが議論の焦点となりました。

マニュライフ・インベストメント・マネジメントの米国金利取引責任者マイケル・ロリツィオ氏は「共和党が上下両院の多数派を占める状況を考えると、当初の予想よりも財政赤字は拡大する公算が大きい」と指摘し、「格下げと同等、あるいはそれ以上の要因となるだろう」と述べました。

この日の為替市場では、ドル売り圧力が強まり、ドル/円は一時144.665円まで下落し、5月8日以来の安値を付けました。

2年債利回りは0.9ベーシスポイント低下の3.974%となり、投資家の間では財政悪化への懸念が金利動向に直接的な影響を与えていることが明確となりました。米株市場は取引時間中に下落していたものの、最終的にはほぼ横ばいまで回復し、S&P総合500種は6連騰を記録。

信用格付け引き下げと市場動揺

市場の反応と投資家心理の変化

5月20日には、前日の米国市場の上昇を受けて日経平均株価が反発し、午前10時時点で前日比333.11円高の37,831.74円となりました。

しかし、米国の信用格付け引き下げの影響が徐々に市場に浸透し始め、ドル円相場では米国の信用格付け引き下げを受けてドルが売られ、円が買われる展開。安値は144.09円までアタックしました。この動きは、投資家が米国の財政健全性に対する懸念を深めていることを物語っています。

ウェルス・コンサルティング・グループのチーフ市場ストラテジスト、タリー・レジャー氏は「(ムーディーズの)発表が引け後だったことから、市場で多少の反応が見られるのは当然だろう」と指摘した上で、「私の見解では『米国売り』の動きは行き過ぎだ」と語った。この発言は、市場の過度な反応に対する警鐘として受け取られ、投資家の間では冷静な判断の必要性が議論されました。

株式市場の調整局面

5月21日には日経平均が反落し、終値は前日比230円安の37,298円となりました。昨日の米国株が軟調だったにもかかわらず、買い遅れた投資家の小口買いが入り、日経平均は序盤に100円を超える上げとなりましたが、買い一巡後は円高などが影響してマイナス圏へ転落しました。この動きは、市場が短期的な調整局面に入ったことを示しています。

米国市場では高値警戒ムードが広がり、ダウ平均は4日ぶりに反落。

トランプ関税の緩和期待から前日までに米国株は3月上旬以来の水準まで戻していたが、この日は目立った材料が見当たらず目先筋の利食い売りが優勢となりました。

また、トランプ大統領が進める大型減税に関しても財政負担が大きいことから米長期金利の上昇につながりやすく、この日はそれが意識されて長期金利はじわりと上昇。米10年債金利は4.609%まで上昇しました。

政府経済報告と政策評価

国内景気判断の据え置きと海外経済への懸念

5月22日に公表された日本政府の月例経済報告では、国内の景気判断を「緩やかに回復しているが、米国の通商政策等による不透明感が見られる」に据え置きました。この判断は、トランプ政権の関税政策が日本経済に与える潜在的な影響を明確に認識していることを示しています。

先行きについては、トランプ米大統領が打ち出した関税措置の影響で下振れリスクが高まっていると指摘し、政策当局の懸念の深さを浮き彫りにしました。

海外経済については「持ち直している」から「持ち直しが緩やかになっている」に下方修正され、これは10カ月ぶりの判断引き下げとなりました。特に米国については、個人消費の鈍化など内需主導の成長に陰りが見られることから2年9カ月ぶりに判断を引き下げました。この評価は、トランプ政権の政策が米国自身の経済成長にも負の影響を与える可能性を示唆しています。

消費者の90日以上の深刻な延滞は危機的なペースで増加しており、過去14年で最高。延滞率の上昇スピードは、リーマンショック時をも上回っています。

 X 朝倉智也さんから

トランプ対EU関税強化発言の衝撃

50%関税警告の背景と意図

5月23日、トランプ米大統領は現状の貿易交渉に進展がないことを理由に、欧州連合(EU)からの輸入品に対して6月1日から50%の関税を課すと警告しました。この発言は、当初提案していた20%の「相互」関税の2倍超に上る大幅な引き上げを意味し、米欧貿易関係の一層の悪化を予感させるものとなりました。

7月9日に関税発動予定だったのに6月1日からはじまるの?!

日本もそれまでに動きがありそうだね。

トランプ氏はSNSトゥルース・ソーシャルに、「EUの強力な貿易障壁や付加価値税(VAT)、企業へのばかげた罰則、非関税貿易障壁、通貨操作、米国企業に対する不当で根拠のない訴訟などによって、米国の貿易赤字が拡大している」として、関税引き上げの正当性を主張しました。この発言は、トランプ政権の保護主義的な貿易政策がより強硬な方向に向かっていることを明確に示しています。

 トランプ大統領のXの投稿

グローバル貿易体制への長期的影響

この50%関税警告は、単なる交渉戦術を超えて、グローバル貿易体制の根本的な変化を示唆している。

EUは米国にとって重要な貿易パートナーであり、このような大幅な関税引き上げが実施されれば、両地域間の貿易量の大幅な減少は避けられない。また、この動きは他の貿易パートナーに対しても同様の措置が適用される可能性を示唆しており、世界経済全体の成長率低下につながるリスクが高まっている。

 

まとめ

5月19日から24日にかけての一週間は、トランプ政権の経済政策が金融市場と国際貿易に与える多面的な影響が顕在化した重要な期間となった。減税政策による財政悪化懸念から始まり、信用格付けへの影響、そして最終的にはEU向け関税の大幅引き上げ警告まで、一連の政策発言は市場の不安定化要因として作用した。

日本を含む各国の政策当局は、こうしたトランプ政権の政策動向を注視し、自国経済への影響を慎重に評価している。特に、関税政策の強化は短期的な市場の混乱だけでなく、長期的なサプライチェーンの再構築や貿易パターンの変化を促す可能性がある。今後は、実際の政策実施の詳細とその実効性、そして各国の対応策が、グローバル経済の安定性を左右する重要な要因となるであろう。

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