アメリカ経済ニュース:トランプ大統領の相互関税政策と市場激震

金融

2025年4月初週のアメリカ経済ニュース:トランプ大統領の相互関税政策と市場激震

先週のアメリカ経済は、トランプ大統領が発表した広範な「相互関税」政策により大きく揺れ動きました。全世界を対象とした関税措置は日本に24%、中国に34%、EUに20%という高水準に設定され、発表直後にNYダウは史上3番目となる2,200ドル超の下落を記録。金融市場では関税によるインフレ再燃懸念から、FRBが6月から年内に計4回の利下げを行うとの観測が強まっています。業界アナリストからは、これらの関税がiPhoneの価格を30-40%上昇させる可能性があるとの試算も出ており、企業の事業計画や消費者心理への影響が懸念されています。

トランプ政権の相互関税政策の概要と影響

前例のない規模の関税措置

トランプ大統領は今週、全世界を対象とした広範な関税措置を発表しました。この措置では、日本からの輸入品に24%、中国からは34%、EUからは20%の関税が課されることになります。

特に注目すべきは、ブラジルからの輸入品に対する関税が10%と比較的低く設定された点で、エコノミストはこれがブラジルにとって相対的に有利に働く可能性を指摘しています。

トランプ大統領は5日、「私の政策は決して変わらない」と強調し、発表から間もない5日午後には10%の関税が発動されることを確認しました。この迅速な実施は市場に動揺を与え、企業も急速な対応を迫られる事態となっています。

引用先:https://jp.reuters.com/

関税規模とその経済的意味合い

JPモルガンの分析によれば、今回の関税引き上げは累計約22%に上り、これは米国で1968年以来最大の増税に相当するとされています。

この数字は、単なる貿易政策の枠を超えた大規模な経済政策の転換を意味し、米国内外の経済活動に広範な影響を及ぼすことが予想されます。

特に消費財への影響は深刻で、iPhoneの米国内価格は30〜40%上昇する可能性があるとの試算も出ており、上位機種では2,300ドル(約35万円)にまで達する可能性があります。

金融市場の激震と投資家心理

史上3番目の株価下落幅を記録

トランプ大統領の関税発表を受け、NYダウは終値で2,200ドル超の大幅下落を記録しました。これは約5年ぶりの大幅な下落であり、史上3番目の下げ幅となりました。この急落はアメリカのみならず世界の株式市場に連鎖し、世界同時株安を引き起こしました。

金融市場では、ドルが主要通貨に対して下落したほか、債券市場では利回りが大幅に低下するなど、投資家が安全資産へ資金を移動させる動きが顕著になりました。

この市場の反応は、投資家が関税政策による経済成長の鈍化とインフレ圧力の高まりを深刻に懸念していることを示しています。

トランプ大統領の市場反応に対する姿勢

トゥルース・ソーシャル

トランプ大統領は「政策は決してかわらない」とSNSで発信し株価は大幅下落しました。

株価の急落について「予想通り」としたうえで、「相互関税で景気が良くなるだろう」との見解を示しました。この発言は、大統領が市場の短期的な反応よりも長期的な政策効果を重視していることを示唆しており、今後も関税政策を継続する意向を強く示しています。

トランプさんは、「短期的には少しの混乱はあるが、許容範囲で、これから先の経済はよくなるよ」と発言していたね。

4月4日、米連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長の公演では意見は対立?!

photo:michael reynolds/shutterstock

パウエル議長は、バージニア州アーリントンでの講演で、トランプ大統領が発表した新たな関税措置について言及しました。 ​彼は、これらの関税が予想以上に大規模であり、米国経済に対してインフレの上昇と成長の鈍化という影響を及ぼす可能性が高いと警告しています。

パウエル議長は、関税の影響が一時的なインフレ上昇にとどまらず、より持続的なものになる可能性があると述べ、FRBとしては長期的なインフレ期待をしっかりと抑える責任があると強調しました。また、現時点では金融政策の調整を検討する前に、さらなる明確さを待つことが適切であるとの認識を示しています。

これらの発言は、FRBがインフレ抑制を優先し、直ちに利下げを行う意向がないことを示唆しています。一方で、トランプ大統領は同日、ソーシャルメディアを通じてFRBに対し、利下げを求めるメッセージを発信しています。

雇用統計が示す労働市場の現状

4月4日に公表された最新の雇用統計によると、米国の労働市場は依然として堅調な状態を維持しており、景気拡大の兆しが見える一方で、いくつかの懸念材料も浮上しています。

4月4日の雇用統計の主要数値

非農業部門雇用者数の増加
発表された統計によれば、先月の非農業部門雇用者数は約20万人の増加となりました。これは、製造業やサービス業を中心に雇用が拡大していることを反映しており、景気の底堅さを示す指標となっています。

失業率の上昇
失業率は4.2%と予想を上回り、4ヶ月ぶりの水準へ。

労働参加率が前月の62.4%から62.5%へ小幅改善したことが一因だと言われています。

平均時給の上昇
平均時給は前年同月比で0.3%上昇。賃金の上昇は消費者の購買力の向上に寄与する一方、企業側には人件費増大によるコスト圧力となる可能性があります。

今後の経済政策と見通し

金融政策への影響

堅調な雇用状況は、連邦準備制度理事会(FRB)にとってはインフレ期待とのバランスをどう取るかが課題となります。パウエル議長は、先週の関税発表や市場の混乱を背景に、引き続き慎重な金融政策運営を示唆しており、労働市場のタイトさがさらなる賃金上昇につながれば、金利引き上げの可能性も視野に入る状況です。

経済成長の持続性

雇用の堅調な拡大は、消費活動を支える重要なファクターです。しかし、供給面の制約や国際的な貿易摩擦といった外部要因も同時に存在しており、今後の成長路線を決定づける要因となるでしょう。政策当局は、持続可能な成長を実現するため、労働市場の動向とともに物価上昇の動きを綿密に注視する必要があります。

消費マインドと政策不確実性の相互作用

金融政策を巡っては、3月雇用統計の強固な数値がFRBの利下げ判断を複雑にしている。市場では6月の利下織確率が発表前の78%から65%に後退したが、4月第一週の米国10年債利回りが3.82%と3カ月ぶりの低水準を記録するなど、債券市場は関税に伴う景気減速リスクを優先的に評価している。

米債利回りは早くも4%を下回り、市場が冷え込み始めているのを示唆しているのではないでしょうか。

FRB内部では「雇用市場の過熱感より、政策不確実性がもたらす投資停滞リスクを重視すべき」とする穏健派と、「賃金上昇がサービス価格に転嫁される二次的インフレを警戒すべき」とする強硬派の対立が先鋭化している。

引用先:https://www.marketpulse.com/

為替市場ドル円は乱高下

トランプ大統領の相互関税に伴う世界経済の先行き不透明が高まる中、中国が報復関税を発表した影響で、外国為替市場では安全資産とされる円が買われ、ドル円相場は一時144円台半ばまで下落し、約1%の円高となりました。

その後、売りが一巡してからは、買い戻しが優勢になり、雇用統計の結果が予想より良かった結果を受け、ドル買いが進行。パウエル議長の「利下げは急がない」の発言で一時は147.43円まで上昇。NY終値は146.92円と乱高下する展開になりました。

まとめ:関税政策と経済の行方

トランプ大統領の「相互関税」政策は、その規模と範囲において予想を超えるものであり、金融市場や経済活動に即座に大きな影響を与えました。市場の激しい反応にもかかわらず、大統領は政策の継続を強調しており、今後もこの政策が米国経済と世界経済の主要な変動要因となることは間違いありません。

短期的なリスク要因として、4月第2週に予定される連邦政府職員の大規模解雇(DOGE効率化計画による14万人削減)が地域経済に与える影響が注目されます。政府機関が集中するメリーランド州やバージニア州では、地域失業率が全国平均を2ポイント上回る水準に達する可能性が指摘されていて、消費減速を通じて全国経済に波及する「多米諾効果」の発生が懸念されます。

今後数週間は、実際の関税施行に伴う経済指標や企業業績への影響、そしてFRBの金融政策対応が注目されるでしょう。特に5月から6月にかけてのFOMC会合では、関税政策のインフレへの影響と経済成長への懸念のバランスをどう取るかという難しい判断が求められることになります。

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