今週のアメリカ経済時事ニュース :関税相場で乱高下な1週間

金融

米国経済最新動向:消費者センチメント急落、物価変動、関税政策の波紋

米国経済は現在、トランプ政権の関税政策による不確実性と景気後退の懸念が高まる中で大きな転換点を迎えています。消費者センチメントが急落し、インフレ率は予想外の下落を示す一方、株式市場は大きく変動しています。最新の雇用データや企業決算シーズンの開始も含め、2025年4月の米国経済は複雑な様相を呈しています。関税政策の影響が実体経済にどう波及するか、連邦準備制度(FRB)の金利政策にどのような変化をもたらすかが、今後の焦点となっています。

消費者センチメントの急落と景気後退懸念

 *ミシガン大学 熱気球

ミシガン大学が4月12日に発表した最新の消費者信頼感指数は、前月比で約11%の大幅な下落を記録しました。この数値は前年同期比で3分の1以上低下しており、特に将来の経済状況に対する楽観的見方は10%減少し、スコアが50を下回りました。この消費者センチメントの悪化は4ヶ月連続で続いており、年齢、所得、教育、地理的位置、政治的傾向を問わず広範囲にわたって見られる現象となっています。

調査ディレクターのジョアン・スー氏は、消費者が景気後退の可能性を示す多くの警告信号を認識していると指摘しています。ビジネス環境、個人の財政状況、収入、インフレ、そして雇用市場に関する期待値はすべて今月も悪化を続けており、特に失業率上昇を予測する消費者の割合は5ヶ月連続で増加し、2024年11月の水準の2倍以上、2009年以来の高水準となっています。

来年のインフレ見通しは相当高い予想だね。

さらに憂慮すべきは、インフレ期待値の急上昇です。今後1年間のインフレ率予想は前月から50%上昇して6.7%となり、1981年以来の最高水準に達しました。長期的なインフレ期待も3月から41%上昇して4.4%となり、特に無党派層で大きな上昇が見られました。

投資会社は景気後退の可能性を高く見積もる一方で、GDP(国内総生産)予測を下方修正しています。アトランタ連邦準備銀行のGDP Nowは第1四半期についてマイナス0.4%を示しており、一般的に景気後退はマイナス成長が2四半期連続することと定義されています。

引用先:https://www.usnews.com/news/economy/articles/2025-04-11/consumer-sentiment-plummets-again-as-recession-warnings-increase

インフレと物価動向の最新状況

インフレ率については予想外の朗報がありました。労働省が4月11日に発表した3月の消費者物価指数(CPI)は月間ベースで0.1%下落し、年率では2.4%となりました。これはエコノミストが予測していた月間0.1%上昇、年率2.6%を下回る結果です。

この予想外の下落は主にエネルギー価格の大幅な低下によるものです。3月のエネルギー指数は2.4%下落し、特にガソリン価格は6.3%低下しました(電気料金と天然ガス価格は上昇)。一方、食品指数は0.3%上昇し、家庭内食品が0.5%、外食が0.4%それぞれ上昇しています。

変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアインフレ指数は3月に0.1%上昇し、年率では2.8%となりました。これは4年間で最も遅い成長率を記録しています。

Restaurant365の購買・在庫管理責任者であるジョー・ハノン氏は、消費者が外食価格の上昇に対応して行動を調整していると指摘しています。「経済環境の変化と最近の政策転換により食品のインフレが高まり、食料品と外食の両方の価格が上昇しています」とハノン氏は述べています。

引用先:https://www.usnews.com/news/economy/articles/2025-04-10/inflation-posts-surprise-drop-in-march-annual-rate-hits-2-4

トランプ政権の関税政策と市場の反応

4月2日、トランプ政権は関税率の引き上げを発表し、米国を大恐慌時代以来の保護主義レベルに戻す動きを見せました。この政策変更は広範な影響を及ぼすと予想されており、専門家は2025年4月15日に更新される経済予測に関税の影響を組み込んでいます。

この関税政策の発表後、株式市場は急激な変動を見せました。4月9日にはダウ工業株30種平均が1,000ポイント以上急落し、前日の歴史的な上昇の大部分を失いました。この下落の前日には、S&P 500が第二次世界大戦後で3番目に大きな単日上昇を記録し、9%以上も上昇していました。この急上昇は、トランプ大統領が「互恵的」関税の一部を90日間停止すると発表したことを受けたものでした。

市場の変動は激しく、4月9日の取引量は約300億株に達し、過去18年間で最高を記録しました。この急上昇は、トランプ大統領が90日間、ほとんどの国に対する関税率を10%に一時的に引き下げると発表したことで促されましたが、カナダとメキシコに対しては追加の10%関税は適用されないとのことでした。

為替介入を巡る駆け引き ドル円相場は乱高下

財務省は4月10日、ドル円相場が140円台後半に達したことを受け、為替安定化に向けた日米協調介入の可能性を探る非公式協議を開始。ベッセント長官が「過度な円安は米国輸入インフレを招く」との認識を日本側に伝達し、政策協調の基盤構築に動いた。

4月9日、トランプ大統領の90日間の関税延期の発言を受け、一気にドル円は144円後半から148円まで上昇し、中国の貿易摩擦激化や、日本の経済再生相が「為替の話題になれば議論することになる」などの発言を受け4月10日から11日で6円弱の下落をし、一時は142.06円まで下落。関税発言で相場は乱高下することになった。

金利政策への影響と連邦準備制度の対応

トランプ政権の関税政策は連邦準備制度(FRB)の金利政策にも大きな影響を与えています。新たな関税は短期的にインフレを悪化させる可能性がある一方、景気後退への懸念も高まっており、FRBは難しい立場に置かれています。

FRB議長のパウエル氏は4月12日の発言で、「関税引き上げは予想よりもはるかに大きくなることが明らかになりつつあります。経済的影響についても同様であり、それにはインフレの上昇と成長の鈍化が含まれるでしょう」と述べています。

債券先物市場は現在、2025年末までに3回以上の利下げが行われる可能性を85%と見積もっており、これは関税発表前の1〜2回の予測から上昇しています。

FRBが4回利下げを行えば、目標フェデラルファンド金利は3.25%〜3.50%の範囲まで引き下げられ、これは昨年のピークから2%ポイント低下することになります。

トレーダーはFRBが5月の会合で利下げを行う可能性を約30%と見ており、これは木曜日の22%から上昇しています。金曜日の取引では、5月の利下げ確率は一時40%まで上昇し、6月の利下げは70%の可能性があるとされています。

企業決算シーズン開始と市場の見通し

米国の2025年度第1四半期の決算シーズンが始まり、JPモルガン・チェース、モルガン・スタンレー、ウェルズ・ファーゴなどの大手銀行が最初に業績を発表します。

アナリストはS&P 500企業の2025年第1四半期の利益成長率を6.7%と予想していますが、これはトランプ氏が2024年11月に再選された時点の予想11%から大幅に低下しています。通年では9.4%の利益増加が予想されていますが、これも年初の予測12.5%を大きく下回っています。

引用先:https://www.fool.com.au/2025/04/11/us-reporting-season-kicks-off-tonight/

投資家はまた、企業の将来見通しにも注目しています。経営陣は投資家向け電話会議で、潜在的な関税の影響とより広範な世界経済への影響について詳しく質問されると予想されています。

特にJPモルガンの決算と投資家向け電話会議は注目されています。CEOのジェイミー・ダイモン氏は、トランプ氏の関税について公に言及した最初の大手銀行のCEOでした。4月7日の株主向け年次書簡で、彼は「新たに発表された関税の正当な理由について何を考えるにせよ—もちろんいくつかはあります—あるいは長期的な影響が良いか悪いかにかかわらず、重要な短期的影響がある可能性が高いです。インポート品だけでなく、投入コストの上昇と国内製品に対する需要増加により、国内価格にもインフレの結果が生じる可能性が高いです。関税のメニューが景気後退を引き起こすかどうかは疑問が残りますが、成長を鈍化させるでしょう」と書いています。

結論:経済見通しと政策対応の行方

米国経済は現在、トランプ政権の関税政策、消費者センチメントの悪化、インフレの変動、そして雇用市場の微妙な状況という複雑な環境に直面しています。これらの要因が相互に作用し、今後の経済成長とFRBの政策決定に大きな影響を与えることが予想されます。

消費者センチメントの継続的な低下は、米国経済の約3分の2を占める消費者支出に影響を与える可能性があり、特にインフレ期待の上昇と組み合わさると懸念材料となります。一方で、3月のインフレ率の予想外の低下は、FRBにとって利下げの余地を与える可能性もありますが、関税による価格上昇圧力との相互作用が複雑な状況を作り出しています。

専門家の間では、トランプ政権の一部の政策(規制緩和や減税など)が消費者や投資家にとって有益である可能性がある一方で、関税を巡る不確実性が経済見通しを複雑にし、不安を生み出していることが指摘されています。特に関税が景気後退を引き起こすかどうかは依然として疑問ですが、少なくとも経済成長の鈍化をもたらす可能性が高いとされています。

このような環境下で、FRBは高インフレと景気後退のリスクという二重の課題に対応するため、慎重かつ柔軟な政策対応を求められています。市場は今後数ヶ月でより積極的な利下げの可能性を織り込み始めていますが、FRBがどのように反応するかが、米国経済と世界経済の短期的な行方を左右する重要な要素となるでしょう。

 

 

 

 

 

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