今週のアメリカ経済時事ニュース

金融

2025年4月第3週 米国経済ニュース総括

今週のアメリカ経済は、トランプ政権の関税政策をめぐる市場の混乱と、予想を超えて堅調さを維持する経済指標という相反する要素が注目される展開となりました。トランプ大統領の大規模関税導入方針により市場では一時的な混乱が広がったものの、主要指数は回復の兆しを見せつつあります。一方で、主要金融機関は相次いでリセッション確率の引き上げを発表し、2025年の米国経済見通しは慎重論が優勢となっています。

トランプ政権の関税政策と市場反応

大規模関税導入と軌道修正の動き

トランプ大統領は貿易赤字是正を目的に、ほぼすべての輸入品に対して10%の基準関税を導入し、中国からの輸入品には最大145%の関税を課す方針を示しました。この関税政策は、一時的に市場の大きな混乱を招きましたが、その後「自動車メーカーの一部を支援する何らかの方法を検討している」と表明するなど、部品の国内生産への切り替えに時間がかかることへの配慮を示唆しています。

こうした政策の軌道修正が見られる中、RBCエコノミクスは現行の関税政策について「平均輸入関税が10%に収束する」というシナリオを想定しています。

これは中国向け関税の緩和や、その他の国々に対する関税が調整される可能性を考慮したものであり、すでに関税率はピークを迎えたという見方を示しています。

今週のトランプ氏トゥルースソーシャルで注目された投稿

パウエル議長の利下げ見送りに疑問視か

“Powell’s termination can’t come fast enough.”
(パウエル氏の解任はいくら早くても早すぎる)
と公言しており、これが一連の“解任検討”発言のきっかけとなっています。

ホワイトハウスの経済顧問ケビン・ハセット(Kevin Hassett)氏は、「大統領とそのチームは、パウエル氏を解任できるかどうか検討し続けるだろう」と述べました。

卵価格への言及

4月18日のホワイトハウス記者会見後、トランプ氏は「In fact, if anything, the prices are getting too low. So, I just want to let you know, prices are down(実際には、価格は下がり過ぎている。卵が余っているので、皆さんにお知らせしておきたい)」と投稿し、卵価格の大幅下落(87%減)に懸念を示しました​。
この発言はX上でも拡散され、The Hillは「トランプ氏が卵価格に ‘やりすぎ’ を懸念」と報じています​。
映像クリップ付きの投稿も瞬く間に拡散し、トランプ氏が物価安定を重視する姿勢を鮮明にしました​。

対中報復関税への反応

トランプ氏は中国の報復関税発動を受け、「CHINA PLAYED IT WRONG, THEY PANICKED – THE ONE THING THEY CANNOT AFFORD TO DO!(中国は間違った対応をし、パニックに陥った――それは中国が絶対にやってはいけないことだ!)」と全大文字で投稿しました。

同様の投稿は複数の速報系アカウントでも取り上げられ、27.7万回以上再生されています。

株式と為替市場の動向

関税政策の導入発表後、一時的に混乱した米国株式市場ですが、S&P500指数は徐々に回復基調にあります。ただし、ABCニュースの報道によれば、関税発表前の水準には依然として回復していない状況です。この市場反応は、投資家が関税政策の実際の経済への影響を見極めようとしている表れといえるでしょう。

今週のドル円相場

今週のドル円相場は、トランプ政権による追加関税政策の影響を受けて、リスク回避的な円高圧力が強まる展開となりました。

トランプ政権が中国などへの大規模関税を打ち出したことで、市場は米景気の先行き不透明感からリスクオフ(安全資産志向)の流れとなり、一時は141.62円まで下落。

そのあとも、日米通商会談で、赤沢経産相が為替の議論は無かったと発言を受け、143円まで戻すも、反発は非常に弱く、ドル円は142.20円で引けました。

トランプ関税による米景気減速懸念と、それに伴うFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ観測がドル安・円高要因となっています。

米国経済見通しの下方修正

主要金融機関のリセッション予測

今週、複数の主要金融機関が米国経済のリセッション予測確率を引き上げました。ゴールドマン・サックスは今年のリセッション確率を従来より高い45%に修正し、JPモルガンはさらに高い60%にまで引き上げています。

バックネル大学のマティアス・ヴェルネンゴ教授はABCニュースのインタビューで「米国経済は非常に回復力がある」としながらも、低インフレと継続的な成長という表面的な強さについて、「慎重になるべき」と警告しています。同教授は、関税政策が引き金となってリセッションが発生する可能性を指摘し、「まだ起きていないからといって、起きないとは限らない」と述べています。

引用先:https://abcnews.go.com/Business/trumps-tariffs-roiled-markets-data-shows-solid-economy/story?id=120920815

RBCの2025年経済予測分析

RBCエコノミクスは4月15日に発表した経済予測で、2025年の米国経済について「成長鈍化、物価上昇、失業率上昇」という厳しい見通しを示しました。特に注目すべきは、2025年の四半期ごとの成長率予測が第2四半期で0.3%、第3四半期で0%、第4四半期で0.5%とゼロ成長に近い水準まで低下するとの見方です。

引用先:https://thoughtleadership.rbc.com/slowing-growth-higher-prices-a-deeper-dive-into-our-u-s-forecasts/

RBCは技術的なリセッション(2四半期連続のマイナス成長)を予測してはいないものの、「リセッション」という言葉自体が経済の実態を正確に表現していないとして、より実質的な経済の減速に注目すべきだと指摘しています。

消費者への影響と経済指標

消費支出見通しの下方修正

特に懸念されるのは、米国経済の成長を支えてきた消費動向への影響です。RBCの分析によると、米国の消費の約10%は国際的な調達に依存しており、実効関税率が10%になった場合(現在の約半分)でも、実質消費支出の成長見通しを1%ポイント下方修正する必要があるとしています。これにより、2026年の消費成長率は1.6%から0.6%へと大幅に低下する見込みです。

引用先:https://thoughtleadership.rbc.com/slowing-growth-higher-prices-a-deeper-dive-into-our-u-s-forecasts/

自国のサプライチェーンでは厳しいから、やはり輸入頼みの構造になっているんだね。

最新の経済指標

現時点における経済指標は依然として堅調さを維持しています。2024年第4四半期の米国経済成長率は年率2.4%と健全な拡大を示しており、ABCニュースによれば、関税政策の影響が経済指標に反映されるまでにはまだ時間がかかると見られています。

ただし、4月のインフレや雇用レベルのデータはまだ入手できておらず、今月末に発表される2025年第1四半期のGDP速報値が初めての手がかりになると予想されています。

財政政策と今後の展望

税制改革の行方

RBCの経済見通しでは、Tax Cuts and Jobs Act(TCJA)の延長が想定されており、これは現在の政策の単なる延長であるため、消費を特に押し上げる効果はないとしています。しかし、TCJAが延長されない場合は、消費者の購買力と支出の低下をモデル化する必要があると指摘しています。

財政赤字の見通し

米国の財政状況については、DOGE(負債削減)関連の見出しにもかかわらず、RBCは2025年に財政赤字が大幅に縮小するとは見ていません。一方、他の先進国(カナダやドイツなど)が大規模な財政刺激策を実施している中、米国連邦政府が政府支出の成長を抑制しようとしているという「財政スプレッド」が、2025年に米国が他の先進国よりも苦戦する理由の一つになると分析しています。

今後注目すべき経済指標

今後の米国経済を占う上で重要となるのが、4月下旬から5月にかけて発表される一連の経済指標です。JTG証券の経済カレンダーによれば、4月23日には3月の新築住宅販売件数、4月24日には3月の中古住宅販売件数が発表されます。

さらに重要なのは、4月30日に発表される2025年第1四半期のGDP速報値、4月のADP雇用統計、3月のPCEデフレーターなどで、これらの指標が関税政策の初期的影響を示すことになります。

まとめ

2025年4月第3週の米国経済情勢は、トランプ政権の関税政策による不確実性と市場の混乱が特徴となっています。現時点での経済指標は依然として堅調ですが、主要金融機関はリセッション確率の引き上げを行い、2025年の経済見通しは慎重な見方が広がっています。

特に注目すべきは、米国経済の主要な柱である消費者支出への影響であり、関税政策の実施により消費成長率が大幅に低下する可能性があります。今後は月末に発表される一連の経済指標に注目し、関税政策の実際の影響を慎重に見極める必要があります。

市場はすでに回復の兆しを見せているものの、政策の不確実性と経済の実態との乖離が続く可能性があり、引き続き警戒が必要な状況です。

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